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さすらいの天才不良文学中年

さすらいの天才不良文学中年

2016年香港探訪記

香港探訪最新事情(前篇その1)

 おいらが香港に最初に足を踏み入れたのは、入社10周年記念の同期会旅行のときであった。


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 昭和58年のことである。

 おいらが入社していた会社は珍しい会社で、入社10周年などの節目になると毎年同期生が大挙して海外旅行に出かけるのである。

 自費で参加するのだが出席率は悪くなく、同期の8割程度が参加しただろうか。おいらの前後の年次の同期会もソウルやシンガポールに出かけている。

 この当時、海外旅行は珍しくなかったが(おいらが始めて海外に行ったのは昭和53年のことで、米国西海岸を半分仕事、半分遊びの探訪であった)、同期では海外が始めてというメンバーも多く、約100人が集まっての旅行はお上りさんの集まりでさながら筒井康隆の小説「農協月へ行く」のようであった。行きのJAL機内の一角は貸し切りのようになり、大宴会が始まるのである。

 今から思うと冷や汗ものであるが、ま、この当時、海外に行くというのはそれなりにイベントであったことと、江戸時代以来の旅の恥はかき捨てという日本人の気質から、こういう景色は日常茶飯事であったのではないかと思う。

 早い話しが、成田から香港までの所要時間は約5時間、その間、機内の一角が居酒屋に変わったのである。

 当時の香港はまだ英領で返還されておらず(97年(平成9年)に返還)、九龍(クーロン)のスラム街では観光客が行方不明となり、バラバラ死体で発見されたなどの物騒な話しが平気で噂されていた時代である。

 日本人観光客はカネを持っているので格好の餌食になりやすく、添乗員から「高価な腕時計をしていると手首ごと切られますので、ご注意ください」などと脅かされたのである。

 そう云われても注意の仕様がないから、真に受けた同期などは「誰だ、香港に決めたのは」といきがっていた始末であった。

 しかし、誰しもそういう危険な目には会わず、同期全員が無事に帰国したのである。何、あたりまえじゃが。

 だからと云う分けではないが、おいらにとって香港は嫌いな街ではない(この項続く)。


香港探訪最新事情(前篇その2)

 考えてみたら、今回の香港訪問は5回目であった。


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 初回は前回述べたとおりで(なお、この同期会旅行はその後も続き、15周年はハワイ、20周年は台北、25周年は北京であった)、2回目は香港に本店のある国際的な銀行に口座を作りに行ったときである。

 なぜ、海外に銀行口座を作ったかというと、非居住者が海外に口座を設けるのは実はやさしくはなかったからである(簡単に作れるのならわざわざ香港まで行かない)。

 おいらはニューヨークに口座を持っていたが、それは居住していたからであり、帰国してからはその口座のある金融機関が個人口座を廃止するというので、引き上げていたのである。

 海外に口座があると小切手の発行など何かと便利である(海外では口座引落しは、原則としてない)。

 また、日本の銀行口座は非常時には封鎖される恐れがあるが(かつて日本では預金封鎖があった)、海外ではその可能性はまずない。

 だから、伝手を頼って、その銀行の紹介状をもらい口座開設のために香港を訪れたのが2回目の香港探訪であった。

 香港島中心部にあり、風水を凝らした高層ビルに入っている銀行訪問は面白いものであった(写真上が高層ビル。写真下が風水を考慮した入り口につながるエスカレーター)。


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 その後、敬愛する会社の先輩と香港を探訪し(3回目)、そのとき食べたマーボー豆腐の味が忘れられず、愚妻を連れてマーボー豆腐を食べに香港を訪問したのが4回目であった。

 しかし、最後の香港訪問から12年が経過し、おいらも馬齢を重ねた。昨年後半から前期高齢者の身になったので、理論上はある日突然おいらに死が訪れてもおかしくはない。

 そうなるとおいらの香港の口座は休眠となって、いつのまにか、わずかばかりではあるがそのカネが香港の銀行のものになりかねない。スイス銀行などでは虐殺されたユダヤ人の銀行預金は持ち主が現れなかったのでそっくり銀行のものになったという話しもある。

 そこで、おいらもここいらが年貢の納め時と考え、12年振りでもあり折角だから香港に行って口座を閉めようと思ったのが今回の香港探訪の動機である(この項続く)。


香港探訪最新事情(前篇その3)

 幸い香港の口座は外貨定期預金としていたので、利息だけで数回分の香港旅行の費用が出るようになっていた(写真は香港地下鉄構内のポスター。こういうポスターが目につく)。


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 だが、豪勢な旅行ともするわけではない。今回はLCC(格安航空機)を使って安く上げようと考えた。

 これまでLCCの評判は多数聞いていたが(サービスが悪い、まるで奴隷船、乗せてもらう雰囲気など)、百聞は一見に如かずである。乗ってみなければ、判断などできない。

 さて、香港探訪の時期は3月一杯までと決め、ネットでLCCを検索した。

 確かに安い。香港までの片道料金は時期にもよるだろうが、5千円程度からある。これだと往復でわずか1万円である。国内旅行の比ではない。これを激安と云わず、何と云うのだ。

 この旅費に宿泊費用を加算するとして、2泊3日の場合だと日本のビジネスホテルのイメージで1泊1万円かかる計算とすると2泊分で2万円。旅費と合計すると3万円程度で香港に行ける計算となる。

 そこで、LCCを使う香港ツアーを検索してみた。

 なんとツアーであっても廉価であり、香港なら最低3万円程度からあることが分かった。それならホテル選びで面倒のないツアーにしようと決め、3月末で一人約4万円の価格のものがあったのでそれにすることにした。

 LCCの航空会社名は、バニラエアー。

 聞いたことがなかったが、調べてみると全日空の子会社と分かった。海外ならまだしも、日本のLCCだったらクオリティは大丈夫だろう。

 ホテルも調べてみると香港島のコーズウエイ・ベイ駅付近に所在し、ネット上での口コミも悪くない。

 こうしておいらのLCCによる香港探訪が始まったのである(この項続く)。


香港探訪最新事情(前篇その4)

 いよいよ香港出発日である(写真は、当日の「成田エクスプレス」車内。早朝なので、ガラガラ)。


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 フライトはバニラエアJW303便。成田午前10時25分発で香港到着予定は午後2時35分(その差は4時間だが時差が1時間あり、実質5時間)。

 格安便は成田発なのである。だが、格安便専用のターミナルは成田の第3ターミナルとある。

 ん!? 第3ターミナル? 聞いてないよぅ。それもそのはず、この第3ターミナルは格安航空のために昨年(2015年)4月にオープンしたばかりの新ターミナルなのである。

 ところで、おいらが最初に悩んだのは、成田エクスプレスの場合、どこの駅で停車するか(どこまで切符を買うか)である。JRは第3ターミナルのために新しく停車駅を作ったのだろうかという素朴な疑問であった。

 これはネットで調べてみたら、第3ターミナルは第2ターミナルから徒歩15分(安全を見た場合は30分)とあり、行先は「成田空港第2ビル駅」と分かった。

 しかも、横浜からだと来年4月まで往復割引が適用されるというので横浜駅で求めることにした。ただし、購入は駅の指定席発券機のみで、みどりの窓口では往復割引切符を発売しないという。

 う~ん、この理由がよく分からないが、東海道線のグリーン券はホームの発売機で買わないと割引がないのと同じなのだろうか。JRというのは不思議な会社である。

 さて、午前8時前に成田空港第2ビル駅に到着した。

 当然のことだが、格安航空は第3ターミナルができる前にも成田に出入りしていたわけで、従来は第2ターミナルから出発していた。それが、格安航空専用の第3ターミナルの新設によって630メートルも離れている第3ターミナルまで行かなければならなくなったのである。これはちょっとした距離である。

 前述のとおり、徒歩で15分程度というから、おいらはバスに乗った方がよいと思い、第3ターミナルに向かう途中、空港の職員に「第3ターミナルまでのバス停はどちらですか」と聞くと間髪を入れず、「歩いて行った方が早いですよ。荷物が少なければ5分程度で着きます。地上に出て下さい」と答えが返ってきた。

 なるほど、そういうものかとおいらは地上に出るためにエスカレーターに乗る(この項続く)。


香港探訪最新事情(前篇その5)

 おいらはエスカレーターに乗って周りの人と同じように上に進んでいったら、第2ターミナルの出国フロアである3階に着いてしまった。


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 あれ、なんじゃこりゃ?と思っていたら、地上の意味はまさしく地上(グラウンド・レベルのこと)で地べたのことだと気付いた。あわてて地上1階まで戻り、第3ターミナルの表示を探す。

 ありました、ありました。

 コロの付いたキャリーバッグを引きながら、第3ターミナルの方向に歩き出す(写真上)。

 この途中の表示が分かりやすい。


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 地面や屋根に「あと何メートル」という表示が頻繁に出てくるのと地面がアンツーカーの感触で歩きやすい。歩く楽しみがある。実際、5分で到着した。

 なお、余談であるが、第3ターミナル連絡バスは約5分間隔で運行されている。しかし、これがとんでもないしろものらしく(遠回りの上、赤信号で停車などし、約10分もかかる。それに待ち時間を加えると15分だ)、しかもバス乗り場から降りてさらに100メートル歩かないといけない。

 だから、ターミナル連絡バスに乗った方がいいのは、重い荷物があるときか、ネタで乗ってみようという物好きだけというからお笑い草である。

 さて、第3ターミナルに近付いてくると、第3ターミナルの雰囲気がおいらに伝わってきた。外装がスレートもどきで出来ているという雰囲気である。

 内部の天井も剥き出しで、マツダスタジアムを彷彿とさせた。無駄なものはいらない、機能さえ発揮できえればそれでいいじゃないかというコンセプトのようだ。これが意外に悪くない。


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 それでも内部を見渡すと、航空会社のカウンターはもとより、コンビニ、本屋、ドラッグストア、みやげ物屋などのショッピングの店の他に両替、旅行保険の窓口、フードコートもちゃんと揃っている。

 格安航空の国内線と国際線の両方がこの第3ターミナルにあるのだ。

 おいらはバニラ航空のチェックイン・カウンターを探した(この項続く)。


香港探訪最新事情(前篇その6)

 バニラ航空のチェックイン・カウンターは二番手にあり、すぐに見つかった。


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 チェックイン・カウンターの手前でおねえちゃんがパスポートと旅程表を確認すると、そこにある機械で切符が出るという。

 カウンター前の集合時間はフライト2時間前の8時25分であったが、現在時刻は8時10分。ちょっと不安になったが、でもそんなのカンケイネエ。

 おねえちゃんの云うとおり、タッチパネルで操作を開始する。これが優れものであった。

 まず、予約番号を入力する。次に、パスポートの写真のある頁を機械(読み取り機)にかざすのである。

 すると、あ~ら不思議、自動的に搭乗券が感熱紙に印刷されて出てきたのである。


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 感熱紙だよ、ペラペラだよ~、あまりにちゃちくて少し驚いたが、ちゃんとフライトナンバーやゲイトナンバー、搭乗時間や座席番号まで表示されている。うへ~、科学の勝利だよ。こりゃ、便利だ。

 これは余談だが、おいらの予約番号を入力した後、連れのパスポートをかざしたらブーとなって、アウト。すかさず、おいらのパスポートをかざしたらOK牧場であった。

 つまり、旅券の名前や番号を間違っていると搭乗券は発券されないのである。機械は賢いが、同時にバカでもあるから、融通など効かない。

 ネットの旅行代理店で今回の香港旅行を申し込んだのだが、そのときに「名前(英文)のスペルの記入がパスポートの記載と異なると搭乗券が発券されないのでご注意ください」と云っていたのはこのことだったのだ。ご注意、ご注意。

 この後、チェックイン・カウンターに立ち寄ろうとしたら、機内持ち込み荷物以外がなければそのまま出国手続きに行けるという。そうか、簡単じゃん。

 搭乗時間は出発の30分前なので、これから1時間半は自由である。当座必要な香港ドルを両替し、フードコートで朝食をとる。香港到着以降は中華オンリーなので、日本食の納豆定食を所望する。なかなかいける。

 みやげもの屋などをのぞく。空港内の店をうろうろするのは、愉しい。なぜか、下着屋もある。日本みやげのつもりか。


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 搭乗時間まで30分となったので、金属探知機の通過と荷物チェックを終了し、税関を横目で観ながら、ガラガラの出国審査のブースに行く。手続きが終わり、搭乗ゲートの手前にあるデューティフリー・ショップに立ち寄る。

 機内は、食事はもとよりアルコール類の提供はない。よって、ここでウイスキーのポケット瓶と水を買う。フライトの中で寝るには酒が一番である。

 以上のルーティンを終え、後は飛行機に乗るだけだから、カフェに立ち寄る。おいらはこのときの高揚感が好きである。搭乗前に生ビールをグラスで注文した。連れと乾杯である(この項続く)。


香港探訪最新事情(前篇その7)

 第3ターミナルでの出国ゾーンにあるデューティフリー・ショップやショッピングの店はさすがに数が少なく売り場面積も狭い。


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 土産物などを買うのであれば、出国手続きをする前に済ませておくべきだろう。

 搭乗ゲートのロビーに行く。ロビーは満席でごった返していた。本日の便は満席だという。

 ゲートの外を見ると、バニラエアのエアバスA320がいた(写真上)。150人程度が乗ることができる中距離型航空機だ。主翼の端が上にとがっているのが特徴である。

 目の前の飛行機に乗るのなら、バスに乗らなくていいと安堵する。格安航空だと飛行機に乗るまでに、搭乗ゲートから一旦バスに乗って、そのバスから降りてもまだ歩く可能性があるなどと当初は思っていたのだが、その心配はなさそうだ。

 定刻の9時55分、搭乗手続きの開始がアナウンスされた。ここまでは格安航空と云っても従来のものと大差ない。しいて云えば、第3ターミナルが遠いことと店の規模が小さいことくらいだろうか。

 アナウンスは、番号の大きい順から乗れと云っている。搭乗口が前方の一か所しかないからだ。おいらの番号は23Aだったので、乗り込み口まで行く。

 外は雨が降っている。一旦外に出て何だかうらぶれた通路を通りながら飛行機に乗り込む。だが、雨に濡れないのが嬉しい。

 さあ、いよいよLCCに搭乗である。


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 一列が「横3人掛け×2」の6人掛けでおいらの席が主翼のやや後ろだから全部で30数列か。そうすると本来は150人程度が乗っている飛行機に200人を詰め込んでいるのだろう。

 案の定、前の座席とのスペースが狭い。座ると身動きができないぎりぎりまで椅子を設置してあるという感じだ。大柄な人や外人なら相当窮屈になるだろう。


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 これでは奴隷船である。いや、奴隷船でも寝ることはできたので、そちらの方がまだましかもとバカなことを考える。

 それに前の席に普通はあるモニターがない。これはちょっと新鮮。アメニティとなるはずのオーディオもない。ただし、読書用のライトと空気吹き出し口はちゃんとついているので安心する(この項続く)。


香港探訪最新事情(前篇その8)

 既に述べたとおり、機内サービスは一切ない。食事は出ないが、飲み物ともども有料である。


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 残念だったのは、機内に持ち込んだ酒を飲むことが禁止されていたことである。え~、そりゃないよ~。ここは持ち込み禁止の飲食店であったか(酔っ払い防止が目的か)。

 搭乗して飛行機がフライトするまで約30分待たされたが、飛行そのものは順調であった。格安だが飛行機の飛行性能に変わりはないようだ。

 フライトが開始して約1時間半、食事の時間がアナウンスされた。香港到着までまだ時間はたっぷり3時間もある。飲まず食わずという訳にはいかないぜよ。座席に備え付けのメニューを見ると、食事はカレーかサンドイッチ。迷わず、カレーを所望する。750円。


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 これが「海の家のラーメン」であった。その心は、「意外に美味い」である。


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 サフラン・ライスとメンチカツ、半熟卵にカレーである。口に入れるとアツアツで、これならイケル。酒はハイボールで400円なので〆て1,150円。

 ただし、周りを見渡すと、ほとんどの人が注文していない。恐らくケチケチ旅行で片道5千円の飛行機に乗っているのに食事代を千円もかけられるかということなのだろう。

 そう考えてみると、食事を注文しているのは日本人ばかりで香港人は皆寝ていることに気付いた(乗客のかなりが香港人。パスポートで分かる)。おいらの席の隣も香港人の若い女性で、全く何も注文しなかった。恐れ入りやの鬼子母神。

 なお、この格安航空機にも2か所だけ座席が広い場所がある。それは、一番前の席と非常口のある席である。

 非常口は主翼の上にあり、帰路は運よくこの席に当たった。乗客が逃げるために前との座席に余裕を設けてあり、ビジネスクラス並みの広さであった。ただし、リクライニングがないのが難点だが(倒すと邪魔になるため)、それでも全く問題を感じないほどの広さであった。


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 以上、格安航空と云っても一般の飛行機との差は、「狭さ、機内サービスなし、第3ターミナル」の3点くらいではないだろうか。客席乗務員の質も悪くない。むしろ、気取っておらず、きさくかも知れない。だから、搭乗していても思ったほどの悲惨さは感じなかった。

 ただし、やはり前との距離が狭いので、搭乗時間は5時間が限度かも知れない。そうだとすると香港程度までの距離が格安航空に乗る場合の一つの目安になるのだろう(前篇終わり)。



香港探訪最新事情(中篇その1)

 格安航空機とは云え、香港までの飛行は順調であった。


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 機長のランディング技術も旨く、香港の現地時間午後3時半、香港国際空港にスムースに着陸した。

 レンタカーの事故はその90%が駐車場内であるというように(これは本当)、飛行機事故もほとんどが離陸か着陸のときである。だから、米国内で飛行機に乗ると、着陸したときには乗客が拍手することが多い。機長を褒めてあげるのである。

 おいらも香港着陸時に拍手をしようかと思ったが、誰もしない。ここは香港なのである。ハイ、ソウデスカ。

 さて、香港の空港と云えば、啓徳空港を思い出す。かつての啓徳空港は九龍にあったので交通至便であったが、場所柄、九龍のビルとアパートの合間に空港があるようなものであり、世界で最も狭い国際空港といわれたものであった。

 だから、着陸進入中の旅客機は機体を大きく傾け、九龍仔公園上空近辺で機体を右旋回させ、ビルすれすれの高さを飛行するものだから、アパートに干してある洗濯物をなぎ倒して滑走路に着陸するという「香港アプローチ」が有名であった。

 一説によると、パイロットは鉢巻をして機体を操縦したという。それほど高度な技術が要求されたのである。

 ま、これは冗談だが、狭い香港で空港を拡張することは物理的に不可能であった。

 そこで、英国から中華人民共和国への香港返還(97年)前に香港総督となったクリストファー・パッテンは、現在の新空港を建設するという英断を下したのである。

 香港の西北にあるランタオ島に隣接する埋め立て島を造り、滑走路二本を備えた24時間空港とし、さらに空港と香港市内を結ぶ高速鉄道も新設したのである。98年のことであった。

 アジアの代表的な24時間ハブ空港となった香港国際空港は、2015年の年間乗降者数は約7千万人でドバイ、ロンドンのヒースローに次いで世界3位、貨物取扱量においては世界1位の規模を誇るまでになっている。

 そういうピカピカの国際空港の着陸ターミナルに到着した。


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 長い動く歩道を歩きながら(写真下)、空港の表玄関まで直結している電車に乗る。二分間隔で動いているので、便利である。


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 さあ、いよいよ空港の正面ロビーに到着である(この項続く)。


香港探訪最新事情(中篇その2)

 おいらはいつものパターンでまず、観光案内所を探した。


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 ここで最新の地図をもらい、香港市内までの交通手段を教えてもらうのだ。

 ありました。空港正面ロビーの中央よりやや左寄りに鎮座しておりました。既に先客が二組係りの人と話し込んでいるので、おいらは順番を待とうとするとカウンターの中から若いお姉ちゃん(係員)が出てきて、何かお困りですかと聞く。

 香港市内の地図が欲しい、ついては香港島に行くにはどの交通手段が良いかとアドバイスを求めたのである。

 実は、成田第3ターミナルの書店で香港の携帯用ガイドブック(2017年版)を買い求めていたので、それによれば高速鉄道(エアポート・エクスプレス)、バス、タクシーの3方法があることは知っていた(なお、このガイドブックは、情報源としてその後も実に役立った。侮れない)。


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 だが、高速鉄道の香港島駅は地下鉄と連絡していない。また、駅からは主要ホテルまでの無料シャトルバスが出ているが、おいらの宿泊するホテルは主要ではないので、少々面倒である。無論、タクシーを使う気もない。

 そこで、以上の事情とホテルの名前をそのお姉ちゃんに伝えると「この時間ならバスが一番いい。しかも、安い」という。香港島行きの高速バスは1時間程度かかるが料金は確かに40香港ドル(600円)と安い。

 それなら、急いでいないので、バスにしてみるかとお姉さんに礼を云ってバス停の場所を聞くとA11だと云う。お礼を云ってバス停を目指した。

 日本ではスイカとパスモ抜きに交通手段が語れないように、香港にもスイカがあるはずだ。

 それがオクトパスとこれもガイドブックで知識を得ていたので、バス乗り場で買いたいと云ったら、空港の事務所で買えと云う。

 日本ならパスモはバスの切符売り場でも売っているのにここでは融通が利かないと思いながら、空港の駅窓口まで戻り、150香港ドル(約2,250円。うち50香港ドルがデポジット。出国時に解約するとデポジットと使用残を返してくれる)出してオクトパスを購入する。

 さあ、いよいよバスに乗車だ。バスターミナルに行き、A11の乗り場を探す(この項続く)。


香港探訪最新事情(中篇その3)

 この高速バスが大正解であった。


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 バスターミナルにいるのは、2階建てバスばかりであった。A11に並ぶ。標識を見ると20分間隔で運行している。これは便利だ。10分も待っただろうか、2階建てバスがやって来た。


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 日本と同じで入口のタッチパネルにオクトパスをかざす。料金の40香港ドル(約600円)が引き落とされる。

 おいらと連れはそそくさとバスの2階に上る。運よく2階の一番前の席が空いていたので座る。


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 ラッキー!!見晴らしは最高である。大型トラックの運転席にいる雰囲気じゃのぅ。


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 時間はまだ3時半すぎ。香港市内までの所要時間は約1時間。まだまだ明るいのでこれから絶景を眺めながらのドライブ気分である。


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 高速を走るので、最初は香港の郊外の様子が一目で分かる。


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 走行中、下のように面白い表示にも出会う。香港では飲酒運転が目に余るのか。


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 九龍半島に近づいてからはバスの2階から香港市内見物である。香港観光はこのバスだけであったとしても十分の様相であった。

 2階建てバスの2階から観る景色は目線がかなり上になる。こりゃ、新鮮である。約1時間、たっぷりと香港の郊外と市内を堪能した。


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 バスを降りる場合は、停車ボタンを押す。日本と同じである。ホテルはヘネシー通りのワンチャイ駅とコーズウエイ・ベー駅の中間に位置しており、コーズウエイ・ベー駅から徒歩7分程度だというから、香港島の目抜き通りに入ったら目の前の電光表示がワンチャイ駅になったらそろそろ降りる準備をする。

 コーズウエイ・ベー駅に近づく手前で連れが宿泊するホテルの看板を見つけた。小さなホテルの看板であるが、良くぞ見つけてくれたものだ。

 バスの停車ボタンを押して下車する。さあ、久し振りに香港島の土を踏もう(この項続く)。


香港探訪最新事情(中篇その4)

 香港島の目抜き通りであるヘネシー通りの雑踏を数分歩く。


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 銀行や雑多な店舗に並んでセブン・イレブンの看板がある。中をのぞくと狭い。広さは六畳一間のイメージだろうか。香港は土地が狭いので、コンビニも狭いのか。

 目指すホテルは鉛筆のように縦にそびえていた。


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 23階建て(余談ながら、香港は英国式だから1階は勘定しない)のホテルで、各階のフロアには客室が3部屋ずつであった。

 ホテルのフロントはこじんまりとしていた。男性二人が座りながらパソコンをいじっている。

 旅行会社からフロントでは旅程表(パソコンから印字したもの)を提示しろと云われていたので、それを見せながらチェックインする。

 このとき、500香港ドル(約7,500円)のデポジットが必要だと云われる。何もなければチェックアウトのときに返戻すると云うので、クレジットカードで支払う(実際、ホテルを出るときにクレジットカードの使用を取り消しにしてくれた)

 部屋の鍵をもらうとおいらの部屋は最上階(23階)の真ん中。ゆるゆると上がっていく「リフト」(英国式だから「エレベーター」と云わない)を降り、電子キーを使って部屋に入る。

 部屋の広さはまあまあである。ただし、洗面所は広く、風呂は外人でもゆったり入れる大きさである。これは助かる。

 見晴らしは最上階だけあって最高!! ただし、向かいに見えるアパートビルは中層で汚い。香港ではアパートの外装を掃除するという概念はない。


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 さて、部屋には水が置いてあるが、72ドルと異常に高い(約千円)。ただし、水はコンビニで買えばよいので安心である。机の上を見ると、カップ麺も置いてある。冷蔵庫の中にはビールも入っているが、目が飛び出る高さなので、必要なら隣のセブン・イレブンに行けばよかろう。

 ホテルは寝るだけなので、これで十分である。

 貴重品を入れるセキュリティ・ボックスも置いてある。任意の暗証番号を自分で入力できるタイプだから便利だ。パスポートと貴重品を入れる。

 バゲージも部屋に置いて身軽となり、リュック一つにカメラを携えて出かけることにする。さあ、いよいよ香港見物にまいろう(「中篇」終わり)。


香港探訪最新事情(後篇その1)

 勝手知ったる香港市内の移動は、MTR(地下鉄)が便利である。


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 おいらは躊躇なく金鐘(Admiralty)駅を目指す。地下鉄構内の雰囲気は東京と変わらない(写真上)。

 相変わらず地下鉄構内には広告が貼りまくってあったが、日本からのものがあったので少々驚いた。


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 そのくせ、地下鉄マップのようなものはほとんど掲示されていない。何(なに)線がどう走っていて、どこに行けるのかが分からない。しかし、ここの乗客は皆ソンナノカンケイネェと地下鉄に乗っている。

 考えてみれば、日本の地下鉄表示の親切さは世界一なのだろう(ただし、英語表示は少ないが)。

 地下鉄の車両は新しく、清潔であった。座席は少なく、移動手段としては詰め込めるだけ詰める主義と見た。

 香港の郊外や周辺から大量の労働者を市の中心部に搬送させるためなのだろう。通勤時間の山手線の座席が上に上がって座れないのと同じである。

 吊皮も金属製である。海外ならではの「車内のつかまり棒」も懐かしい。


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 さて、初日、最初に目指すのはやはり香港に着いたらここに行かなければ何も始まらないと云われるビクトリアピークである。連れが香港は始めてだからでもあるが、ここは何回訪れても問題ない。

 金鐘(Admiralty)駅に到着する。

 地図を見ながら、トラム(登山電車)の乗り場を探す。約10分歩いて道を間違えたかと思ったら、目の前に突然ピーク・トラム駅の乗車口が現れた。


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 これが長蛇の列。

 今日は月曜日だがと思ったが、さすがにここは観光都市である。観光客でごった返している。やれやれ、これだと切符を買うのに2、30分待たされるのかと思いながら列の最後尾に並ぶ。

 するとおばさんが真っ赤なちらしを配っているではないか。誰も貰おうとしないが、こういうときにおいらは機敏である。

 手許に貰って読んでみると、マダムタッソー蝋人形館の入場券とトラムの乗車券をセットで買うと安くなるようだ。しかも、シニアならさらに安い。

 マダムタッソー蝋人形館とは、知る人ぞ知る世界一の蝋人形館である。本家はロンドンにあり、たしか東京ではその昔、新宿にあったはずだ。余談だが、ロンドンのタクシーに乗って「マダムタッソーまで」と云って連れて行って貰える日本人はまず、いない。英語の上級者でないとマダムタッソーの発音は無理だそうである。

 さて、おいらは連れを列に残し、蝋人形館の入場券とトラムの乗車券セット売り場を目指した。シニアのことを聞きたいと思ったからである(この項続く)。



香港探訪最新事情(後篇その2)

 入場券売り場はすぐに見つかった。


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 そもそもトラムの乗車券は片道28香港ドル(約420円)。この往復料金である56香港ドル(約840円)とマダムタッソー蝋人形館の入場料250香港ドル(約3,750円)を合わせて300香港ドル(約4,500円)と表示してある(写真上)。

 それが窓口に云ったら、250香港ドル(約3,750円)まで安くし(つまり、乗車券がタダ)、シニアも150香港ドル(約2,250円)までまけてくれるというのだ。

 おいらがシニアは何歳からだと聞くと65歳からだと返ってきた。前期高齢者になったばかりのおいらはOK牧場である。

 そんなにダンピングしないと蝋人形館は入場者がいないかと思ったが安くなるのだ、ま、いいかとセット入場券を買うことにした。

 パスポートを見せろというので、おいらは用意していたパスポートのコピ-を提示する。

 これで、長い列から解放されてセット割引の乗車入り口から駅構内に入ることができた。ちょうど日が暮れてきた時間である。

 待つこと数分、駅舎の上から巨大な音を立ててトラム(登山電車)が降りてきた(写真下)。2両編成で1両に5,60人が乗れるだろうか。おいらの前で乗車制限されたので、1回待って(5分くらい)乗車することができた。


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 これが急こう配なのである。ガガガガと大きな音を立ててトラムは山頂めがけて登って行く。

 ゲゲ、窓から見える建物が斜め約45度の傾斜だ。こういうときには、人間の脳は補正するのである。おいらが前に45度つんのめっている錯覚に襲われる。

 数分で突然、下界の景色が広がる。夜景である。絶景としか云いようがない。5分程度で山頂に到着する。


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 駅舎がビルになっており、ビルから外に出て写真撮影のメッカまで行く。カメラを持った観光客の人だかりだが、絶好の撮影スポットをゲットし、写真を撮りまくる。


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 香港の夜景が世界一と云われる理由が分かる。香港は狭いので横に広がることができず、島の中に無理やりビルを乱立させ、地盤が固くて地震もないから高さ無制限で上へ上へと増殖して行ったのだ。

 こういう立地条件の夜景は世界のどこを探してもないだろう(この項続く)。


香港探訪最新事情(後篇その3)

 マダムタッソー蝋人形館に入る。


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 のっけから驚かされる。ジャッキー・チェンが目の前にいるのだが、これが光線の加減で本物そっくりに見えるのだ。髪の毛一本、一本、顔の皮膚の毛穴まで精巧に再現されているからだ。


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 このチェンの隣に立ってツーショットを撮っている人が多いのだが、隣にいる人間が動いていないときなどはひょっとしたらその人まで蝋人形ではないかと錯覚してしまうくらいである。

 おいらはこの蝋人形館に入るのは二度目だが、前回にはそんな感じになることはなかった。ということは、人形の精度が飛躍的に上がったのだろうか、いや、そうとは思えない。マダムタッソーの蝋人形の水準は昔から世界一だからである。

 したがって、本物の人間に見える理由は光の当て方を巧くしたのではないかと思ったのである。

 具体的には、天井からの光はLEDのような澄んだ色ではなく、白熱電球のような明るい光源を使っているのである。だから、肌の色が橙色に反射しており、まるで生きているような肌色に見せているのである。

 蝋人形のスターはハリウッドのスターやプロスポーツなどのスーパースターはもとより、香港だけあって香港や中国のイケメン俳優もいる。ヨン様まで鎮座していた(座っている訳ではないが)。


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 政界の重鎮もいる。英国統治が長かったからかエリザベス女王の蝋人形は迫力満点。おいらは迷わずツーショットを撮ってもらった。ミーハーじゃのぅ。


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 米国のトップであるオバマ大統領(どうでもよいことだが、「おばまだいとうりょう」と入力すると、最初は「小浜大統領」と変換されるからおかしい)も本物そっくりである。


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 とにかくどの蝋人形もツーショットできるように設置してあり、人気のあるスターの周りはいつも人だかりである。前回訪問時に人気だったベッカムは今や人気薄で誰もツーショットを撮っていない。

 新スターの誕生により、新しい蝋人形が設置されると落ち目の蝋人形はお蔵入りになるのだろう。蝋人形の世界も人気がバロメーターだから厳しいのである。

 マダムタッソー蝋人形館の入場料は少々高いが、この蝋人形館は侮れない。おいらと連れは1時間以上にわたってこの不思議な世界を堪能したのであった(この項続く)。


香港探訪最新事情(後篇その4)

 夜も9時近くになったので下界に降りて、香港初日の晩餐をとろうと考えた。


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 だが、登山電車の降り口に行くと長蛇の列である。皆、考えることは同じなのである。

 このまま下山のトラムを待つとなると恐らく30分は待たされるであろう。それほど長い列なのだ。

 同時に夜も9時になろうとしているので、昼飯の格安航空の中で喰ったカレーはとっくに胃で消化されている。早い話しが腹が減っているのである。

 しかし、ここは山頂でレストランと銘打っていても軽食が中心の店しかない(写真上)。

 前回このビクトリアピークに着たときは午後3時ごろだったので、ここで喫茶した記憶がある。

 レストランの入り口にメニューが置いてある。大したものはない。おいらの好きなマーボ豆腐がないのである。おいらは香港で旨いものが喰いたいからである。しかし、背に腹は代えられない。

 アワビソースの炒飯とマレーシア風焼きそばを頼み、連れとシェアすることにする。ビールは青島(チンタオ)の缶ビール。少々ショボイがこれが海の家のラーメンであった。空腹が幸いしたのかも知れないが、アワビソースの炒飯はイケた。二人合計で230香港ドル(約3,500円)。


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 夜も更けたので、トラムで下山し、タクシーに乗車してホテルに到着する。28香港ドルだったので、30香港ドル(約450円)を渡し、お釣りはチップにする。香港のタクシーは安い。日本の3分の1のイメージだろうか。

 なお、香港のタクシーは皆クラウン(タクシー仕様のコンフォート)である。日本の中古なのか、古いクラウンばかりであった。

 ホテルに入ったのが10時半ごろ。風呂に入り、成田の免税店で買ったシーバスリーガルの12年物を飲む。

 いよいよ明日は中日。12時就寝とした。ぐっすりと眠る。香港初日の徒歩数は12,000。愉しい一日であった(この項続く)。




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